恋愛零度。


「……ああもう、見てられないわ。貸して」

しびれを切らしたお母さんにりんごを奪われそうになって、私は「ダメ」と取り戻す。

「病人はじっとしてて。お母さんがなんでもかんでもやっちゃうと、私がなんにもできないままなんだから」

お母さんは、一瞬驚いた顔をして、そっと苦笑した。

「そうね。じゃあ、任せるわ」

なんとか最後まで皮を剥ききったりんごは、一回りくらい小さくなってしまった気がしたけれど、

「うん。おいしい」

そう言ってお母さんが笑ってくれたから、私も嬉しくなる。
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