恋愛零度。

マロンがうちにやってきた日ーー

道端に捨てられていた。放っておけなかった、とお母さんは言った。

動物がとくに好きでもなかったお母さんが、捨て犬を拾ってきたことが、まず妙だと思った。

でも、それ以上に、あんなにマロンを大事にしていた奏多が、どんな事情があっても道端に捨てるだなんて、そんなの絶対にあり得ないと思った。

中学卒業と同時に、奏多がいなくなって。

マロンがうちにやってきた。

あのときは、奏多がいなくなったショックで気づかなかったけれど、よく考えてみれば、そんな偶然あるわけがない。

桐生くんや、お姉ちゃんの話を聞いて、ようやく気づいた。

奏多は、マロンを捨てたんじゃない。

置いていったんだって。

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