恋愛零度。


春になって、奏多はこの町を出て行った。

『別れを言うのが苦手でさ……言えなかった』

誰に、とは、聞かなくてもわかった。

『蒼、絶対、病気治すんだぞ。諦めるなよ』

それからは、ずっとメールでやり取りをしていた。

手術が成功して、退院できる伝えると、奏多は本気で喜んでくれた。

退院したら、行ってみたい場所があった。

奏多がよく言っていた、あの川原だ。

そこに行けば、真白に会えるんじゃないかと思った。

最初は、どんな子なんだろうと、単なる興味本位だった。

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