恋愛零度。

『……なんでもっと早く言わなかったんだよ』

『言っただろ。別れを言うのが苦手なんだって』

奏多は苦笑しながらそう言った。

窓から昼下がりの白い光が差し込んで、奏多の血色がなくなった顔を、いっそう白く見せていた。

『死ぬまでにしたい10のことって、有名な映画があるだろ。あれみたいにさ、考えてみたんだけど、10個と思いつかなくて』

奏多は言った。

『でも、ひとつだけ、真白に笑ってほしいなって』

と、奏多は言った。

遠く離れても、真白の心配ばかりしていた。

最後の最後までーー。

『でも俺は、もうこんなだから……会いにも行けなくなっちゃったからさ……僕の代わりに、この手紙を渡してほしい』

『手紙……?』

『ああ、僕からの最後の手紙。ラブレターだ』

あ、それと、と奏多はついでみたいに言った。

『ちなみにそれ、蒼の名前で書いといたから』

『は?』

『だからそれは、蒼からのラブレターでもあるってわけ』

『はあ?』

意味がわからなかった。

でも、奏多は、大真面目だったんだ。


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