恋愛零度。


「……で、今日は何の用?」

「用っていうか、一緒に食べようと思って」

と彼は、にっこり笑って言うと、手に持っていた袋から、サンドイッチとカフェオレを取り出した。

「……はい?」

「俺、今日はここで食べたい気分なんだよねー。べつにいいよね?」

「よ、よくない、全然よくない」

私はぶんぶんと首を振った。

「どこで食べようと、俺の自由でしょ?」

「その辺、いっぱい空いてるけど……人の話聞いて?」

必死に抗議する私にまるでお構いなく、おいしそうにサンドイッチを頬張りはじめる桐生くん。

……だめだ。全然話が通じない。

私は諦めて、無言で、過去最高くらいのスピードで、お弁当を平らげた。

「ごちそうさま」

さっさと片付けて、立ち上がった。

「あれ、もう行っちゃうの?」

「もうすぐテストだから、図書室で勉強する」

「えらいねー。俺なんて、前日しかやらないよ?」

「あっそ。それじゃあ」

私は冷たく言い放って、中庭を後にした。
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