恋愛零度。




はらはらと雪が舞い落ちてくる。

どこか遠くの場所から、風に流されて飛んでくるみたいに。

「奏多、本当は、自分が言いたかったと思う。言いたくて仕方ないけど、自分じゃ好きな子を守れないから……真白のそばにいられないから、その気持ちを、俺に預けたんだと思う」

その気持ちが、あの手紙に込められていた。

きれいな字だと思った。奏多が、精一杯の思いを込めた“最後の手紙”。

「だから、奏多が高校に入ってしたかったこと、できなかったことを全部、しようって決めた」


真白に告白すること。

あのイチョウ並木の道を一緒に歩くこと。

あの川原で子どもに戻ったみたいに遊んで。

夏には海に行って、冬はスノボとかスカートとかウィンタースポーツなんかやったりして。

おいしいものを食べて、笑って、映画を観て泣いたりして。

やりたいことは無限にあった。

奏多のやりたいことが、いつしか自分がやりたいことになっていた。


「だけど、やっぱり迷いもあったんだ……真白のそばいるべきなのは奏多のはずなのに、真白が本当にそばにいたいのは、奏多のはずなのにって」

「そんな……」

言いかけて、言葉を止めた。

迷わせていたのは、私だ。私のあやふやな態度が、君を迷わせてしまったんだ。


「でも、奏多に会いに行って、迷いが消えた」


桐生くんが、今度ははっきりとそう言った。

「写真を見せてもらったんだ。小さい頃からの、たくさんの写真。そこに、真白もいた。マロンも、俺も……奏多のまわりの、大事に思っていた人が写ってた。みんな、笑ってるんだ。奏多のそばにいると、みんな自然と笑顔になっちゃうんだよな。それで、やっとわかったんだ。真白に笑ってほしい。それは奏多の願いでもあるけど、俺が心から望んでることでもあるんだって」

目が合って、君が綻ぶように微笑む。

胸が熱くなるような、優しい表情、それでいて力強い声。

「俺は、真白が好きだから。好きな子には、いつも笑っててほしいって、思うから」


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