恋愛零度。


人を好きになっちゃいけないって、呪いのように、ずっと思っていた。

だから奏多への気持ちに気づいていても、それを認めずに、伝えることもできなかった。

でも、好きになっちゃいけない理由なんて、どこにもなかったんだ。

誰かを好きになるのは、自然なことだから。

その気持ちをいちばんに、自分が認めてあげなきゃいけなかったんだ。

認めてしまったら、ずっと行き場がなくて苦しかった心が、すっと軽くなった気がした。


私は目に涙を溜めたまま、空を見上げた。

白い空からはらはらと雪が舞い落ちる。ゆっくりと、この世界を白く染めてゆく。



「奏多、見てるかな」

「うん、見てるよ、きっと」



ーー僕の大切な人に、幸せになってほしい。


偶然なんかじゃなかった。

いまここにある幸せは、奏多が繋げてくれた、奇跡だったんだ。


奏多の願い、叶えたよ。私、いま、笑ってるよ。

幸せだよ。これからも、たくさん笑うから。

だから、見ててね。

楽しかった思い出のこの場所を、もう悲しい涙ばかりの場所にはしない。

君と一緒に、幸せに変えていくんだ。








< 264 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop