恋愛零度。
*
「はあああああ……」
この数日間で、何度ため息を吐いただろう。
ため息ひとつで幸せが逃げていくなら、私の幸せなんて、もうとっくにマイナスにちがいない。
いつものように、学校から帰って、川原までマロンの散歩に来ていた。
この場所でだけは、誰にも邪魔されることなく、ホッと息をつくことができる。
どうして私なんだろう、って、100回くらい考えた。
一目惚れなんて言葉、いちばん信用できない。
ただ顔を見ただけで、話したこともない相手を好きになるだなんて、絶対おかしいでしょ。
仮に本気で好きだと思ったとしても、そんなの勘違いだ。
きっと、なにか企んでいるんだ。
なにか悪いことを……って、なにを?
お金持ちでもなければ美人でも人気者でもない私を騙して、いったいなんのメリットがあるっていうんだろう。
人を好きになったこともない私には、まったくもって理解不能だった。