恋愛零度。
私は地面に落ちている小石を拾って、川面に向かって投げてみる。
石は飛び跳ねることもなく、ぽちゃんと頼りない音をたてただけで、一瞬にして水の中に消えてしまった。
「相変わらず、下手くそ……」
私は苦笑しながら、そっとつぶやく。
ーー真白、ヘタだなー。
そう言っておかしそうに笑う声が、脳裏をよぎる。
ーー奏多だって、人のこと言えないじゃん。
ーー真白よりはマシだよ。
ーーなにこの低レベルな争い。
ここにいると、過ぎ去った記憶が蘇る。
奏多の笑った顔。笑う声。
いつも笑顔だった。学校で嫌なことがあっても、私はその笑顔を見れば元気になった。
いつまでもあの日常が続くんだと信じていた。
だけどそれは、もう過去のことで。
ふいに蘇っては、泡のように消えていく。
もう二度と、あんな日々は戻ってこないんだ。
それを知っているから、こんなにも辛いんだ。