恋愛零度。
*
テストが始まった。
「どうだった?」
「全然ダメだー」
あちこちからそんな声が聞こえてくるなか、私はさっさと帰る支度をする。テスト期間中は、半日で終わりだ。
なにより嬉しいのは、昼休憩がないってこと。これで桐生くんに会わずに済む。
はやく帰って勉強しよう、桐生くんに遭遇する前に。
そう思ったのにーー
「あ、真白っ!」
帰り道、学校のそばのイチョウ並木で、声をかけられてしまった。
振り向かずに足を早めるけれど、すぐに追いつかれてしまう。
「もしかして、逃げようとしてる?」
「……わかってるならわざわざ話しかけないでくれる?」
そう言いながら、なんだか、妙に周囲の視線を感じた。
……ていうか、めちゃくちゃ見られてる!?
「じゃ、じゃあっ!」
私は言って、その場から走り去った。
私の遅い足なんて、桐生くんなら歩いてでも追いつけそうだけど、さすがに追ってはこなくて、ホッとした。
家に帰ると、お姉ちゃんも帰ってきていた。私よりはるかにレベルの高い学校に通うお姉ちゃんも、テスト期間は同じらしい。
今日のお昼ごはんは、お姉ちゃんと2人で、残り物のカレーになった。
「テスト、どうだったの」
お姉ちゃんがカレーを食べながら、暇つぶしみたいな口調で訊いてきた。
「うーん、まあまあかな」
「そう」
お姉ちゃんはそう言って、私の顔をじっと見る。
「な、なに?」
「あんた最近、やっぱり、なんか変」
お姉ちゃんは、真顔で言った。
「えっ?どこが?」
「どこがって言われると、なんとも言えないけど……なんか妙に落ち着きがないっていうか、様子がおかしいっていうか」
様子がおかしいって……。