恋愛零度。
「桐生くんが1位かあ」
「桐生くん、頭いいもんねぇー」
当たり前のように言う三好さんと渡辺さん。
……え?なんで?
だって、前日しか勉強しないって言ってたのに。
あんなに余裕そうだったのに。
ああ、そうかーー
ほんとに余裕だったんだ。
私が少し冷静さを失っただけで、あっさり負けてしまうくらいに。
授業中、内容がまるで頭に入ってこなかった。
「ーー唯川」
「は、はい」
名前を呼ばれて、はっと我に返った。
「この英文の和訳、わかるか?」
先生が黒板を指して言う。3行の英語。ちゃんと予習はしてきたはずなのに、初めて見た単語ばかりに見える。
「……すみません、わかりません」
「お、おお、そうか、珍しいな。じゃあ次ーー」
当てられて答えられないのも、初めてだった。
なんでこんなにショックを受けているのか、自分でもよくわからなかった。