恋愛零度。
*
靴を履き替えて外に出ると、ぽつりぽつりと雨が降っていた。
ーーあ、傘、ない。
朝、微妙な天気予報を見て、念のため持って行こうと思っていたのに、家を出る頃には忘れてしまっていた。
……やっぱり私、変だ。
いつもなら、絶対に傘を忘れたりしないのに。
濡れて帰ることを思うと、憂鬱さがさらに重みを増した。
そのとき、
「ーー真白?」
ふいに名前を呼ばれた。
誰かはすぐにわかったけれど、振り向けなかった。
いま、いちばん会いたくない人だったから。
「あれ、もしかして傘ない?貸そうか?」
「べつに、これくらいなら平気」
「え、でも、途中でもっとひどくなるかもよ?」
テストの結果なんてまるで気にしていないその口調に、無性に苛立った。
……そりゃ、そうだよね。1位だったしね。
そもそもテストの結果ひとつでこんなに落ち込んでいる自分が変なんだって、わかっているけれど。