恋愛零度。
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私が桐生くんを振ったという噂は、瞬く間に広まった。
噂に関してはまるっきり疎い私の耳にもきっちり届くくらいだから、もはや、全校生徒に知れ渡っているレベルなのかもしれない。
……本当にモテるんだな、桐生くん。
いままで知らなかったことが不思議なくらい、意識すると、その名前があちこちで聞こえてくる。
廊下を歩けば、
「なんか、唯川とかいう子が桐生くん振ったらしいよ」
「まじ?そいつ何様?」
なんて会話がどこからともなく聞こえてくるし。
かと思えば、
「なんか唯川とかいう子が桐生くんのこともてあそんでボロボロにした挙句ゴミみたいにポイ捨てしたらしいよ」
「まじ?そいつ何者?」
なんて尾ひれがついて、私がとんでもなくひどい女みたいになってたりするし。
噂って、本当に怖い。
私のことを知らない誰かが、私のイメージを勝手に作り上げて、こね回して、好き勝手に変えていく。
自分の知らないところで、自分の知らない自分が歩き回っているみたい。
だけど、それが完全に自分が蒔いた種なのだから、誰にも文句も言えないのだった。