恋愛零度。
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「唯川さん、ノートありがとう。助かったよー」
「うん、よかった」
本を読んでいた私は、顔をあげて言った。
「唯川さんのノート、すっごい見やすい。字がきれいだし、ポイントがまとまっててわかりやすいし」
「私のでよければ、いつでも貸すよ」
そう言うと、三好さんが急に、私の顔をじっと見つめる。
「……な、なに?」
「唯川さん、なんか、変わったよね。前より雰囲気が柔らかくなったっていうか」
「え?」
変わった?
そういえば、お姉ちゃんにも、おなじようなことを言われたけれど。
自分では、全然わからない。
自覚がないことを人から言われると、戸惑ってしまう。
「それってもしかして、桐生くんの影響だったりして……とか、思っちゃったしりてーー」
「あのさ、三好さんって、もしかして、桐生くんのことが好きなの?」
言葉を遮って、私は言った。
「へ?な、なんで?」
「だって、やけにそのこと訊いてくるし。そうなのかなって」
「あ、ごめん。ちょっとしつこかった?」
三好さんが苦笑いしながら言った。
「……うん。あんまり、話したくない」
「そっか。ごめんねー何度も聞いて」
嫌な言い方をしたと、自分でも思う。
だけど触れてほしくないのは本当だから、それ以外に言いようがなかった。