恋愛零度。
「桐生くんの噂を聞いて、ちょっと嬉しかったんだ。唯川さんも普通の女の子なんだって。人を好きになる気持ちなら、あたしにもわかると思ったから。だから、ついテンション上がっちゃって、しつこく聞きすぎちゃった。ごめんね、誰が誰を好きになるかなんて、そんなの自由なのにね」
バカだよねえあたし、と苦笑いする三好さん。
ちがうよ、と私は思った。
馬鹿なのは、私のほうだ。
どんな話題だって、話しかけてくれて、嬉しかったのに。
「私こそ、嫌な言い方して、ごめん」
だから素直に、そう言った。
「……私も、うらやましかったんだ。そんなふうに、素直になれるのが」
恋の話ではしゃいでいる女子たちを、馬鹿にしていた。
頭軽い、中身がない、それしか話すことないのかなって。
そんなことを頭のなかで考えながら、現実の私は、誰とも話そうとしなかった。
心のどこかでは、わかっていたんだ。
誰かと繋がりたい気持ち、自分の「好き」という気持ちを素直に言葉にできる彼女たちは、私なんかよりずっとすごいんだって。
本当は気づいていた。でも認めたくなくなくて、見下すことで、目をそらしていたんだ。