恋愛零度。



「ふう、結構頑張ったねー」

「1時間もやってたもんね」

校庭の時計を見ると、5時を指していた。

「うわほんとだ。やば、ちょっとは部活顔出さないと」

「私やっとくよ。あとゴミ捨てくらいだし」

「ほんと?ひとりで大丈夫?」

「うん。いってらっしゃい」

ありがとう、と手を振りながら体育館に向かう三好さんを見送って、私はよいしょっとゴミ袋を持ち上げる。

ひとりで大丈夫とは言ったものの、

「う……けっこう重い……」

ズシリと手にかかる重圧に、強がってしまったことをはやくも後悔する。

まわりを見るともうみんなほとんど帰ってしまっていて、手伝ってもらえそうな人はいなかった。

「大丈夫?手伝おうか?」

他のクラスの女子がやってきて、声をかけてくれる。

「あ、いえ……」

顔をあげると、さらさらの長い黒髪がきれいな、モデルみたいなスタイルの美少女がいた。

にっこり笑って小首を傾げる仕草がこんなにも似合う女の子を、私は初めて見た。

「どうしたの?」

「あ、いえ、大丈夫なので……」

思わず見惚れてしまって、私ははっと我に返って言った。

「遠慮しないで。私、もう帰るだけだから」

彼女はにっこりと優しく微笑んで言った。

「じゃあ……お願いします」

「いえいえ」



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