恋愛零度。
*
「ふう、結構頑張ったねー」
「1時間もやってたもんね」
校庭の時計を見ると、5時を指していた。
「うわほんとだ。やば、ちょっとは部活顔出さないと」
「私やっとくよ。あとゴミ捨てくらいだし」
「ほんと?ひとりで大丈夫?」
「うん。いってらっしゃい」
ありがとう、と手を振りながら体育館に向かう三好さんを見送って、私はよいしょっとゴミ袋を持ち上げる。
ひとりで大丈夫とは言ったものの、
「う……けっこう重い……」
ズシリと手にかかる重圧に、強がってしまったことをはやくも後悔する。
まわりを見るともうみんなほとんど帰ってしまっていて、手伝ってもらえそうな人はいなかった。
「大丈夫?手伝おうか?」
他のクラスの女子がやってきて、声をかけてくれる。
「あ、いえ……」
顔をあげると、さらさらの長い黒髪がきれいな、モデルみたいなスタイルの美少女がいた。
にっこり笑って小首を傾げる仕草がこんなにも似合う女の子を、私は初めて見た。
「どうしたの?」
「あ、いえ、大丈夫なので……」
思わず見惚れてしまって、私ははっと我に返って言った。
「遠慮しないで。私、もう帰るだけだから」
彼女はにっこりと優しく微笑んで言った。
「じゃあ……お願いします」
「いえいえ」