恋愛零度。

「私、3組の東梨花っていうの。よろしくね」

そう言ってにっこり笑う彼女に、私も続けて自己紹介をする。

こんなきれいな子がおなじ学年にいたんだ。

隣を歩いていると、自分が、ひどく子どもっぽく思えて、なんだか居心地が悪くなる。

「唯川さんって、頭いいよね。いつも成績上位に入ってるよね?」

「そんなことないよ」

私は苦笑いをする。

こんなにキラキラした人にすごいなんて言われても、ちっとも褒められてる気がしない。

「すごいなあ。将来のこととかもう考えてたりするの?」

「ううん、そこまでは……」

「そうなの?なにか夢があって、そんなに勉強ばっかりしてるんだと思ってた」

彼女は口に手を当てて、くすりと小さく笑った。

私は、その笑い方を知っていた。

心に棘が刺さるような、嫌な笑い方だった。

「じゃあ、好きな人は?気になる人とか」

「いないよ」

「そっかぁ」

と彼女は微笑んだまま。

「私ね、好きな人に振られちゃったんだ。知ってる?ーー桐生蒼くんって人」
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