恋愛零度。

「少なくとも俺は、こういう汚いことする人を好きにはならないし。それに、なんか勘違いしてない?」

桐生くんは、私の肩をぐっと自分のほうへ引き寄せた。

「勝手に好きになって諦められないのは、俺のほうだから」

「…………………!?」

こんな状況で、なにを平然と言っちゃってるんだ、この人。

東さんが、白い顔を真っ赤にして、ワナワナと震えだす。

「ーーあっそ。勝手にすれば……っ!」

長い髪を翻し、お決まりの捨てゼリフを残して、さっさと行ってしまった。

私は呆気にとられて、ぽかんと立ち尽くしていたけれど、はっと大事なことに気づく。

「……あの、桐生くん、肩……」

「あ、忘れてた」

忘れてた……!?

「てか、真白、それ……」

桐生くんが私の背中を指して、小さく吹き出す。

「後ろ、葉っぱすごいついてる」

「わ、ほんとだ!」

首をひねって見ると、細かい葉っぱが制服に大量にくっついていた。
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