恋愛零度。

「……どうして、私なの」

桐生くんと出会ってから、もう何度も投げつけてきた言葉。

そのたびにさらりとはぐらかされて、結局なにもわからなくて、苛々した。

一目惚れなんて言っていたけれど、そんなの私は信じれない。

そんなに簡単に動かされる気持ちなんて。

「……だって、ほかに可愛い子とか性格がいい子とか、たくさんいるのに」

たとえば三好さんみたいな、明るくてまっすぐな子とか。

渡辺さんみたいな、女の子らしくて優しい子とか。

東さんだって、きっと本気で桐生くんのことが好きなんだ。

やり方はよくないけれど、きっと本当に好きだからこそ、あんなことをしたんだ。

まわりを見れば、どう見たって私より素敵で、魅力的な女の子たちが、たくさんいるのに。

ーーどうして、人を好きになれない私なんかを好きになったんだろう。
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