恋愛零度。

「真白じゃなきゃダメなんだ。ほかの誰かじゃ、ダメなんだよ」

桐生くんのまっすぐな眼差しが、私を貫く。

力強い声が、心を揺さぶる。

こんなにカッコいい人に告白なんてされたら、きっと普通の女の子なら、誰だって嬉しいはず。

だけどーー、

「……ごめんなさい」

私は、その気持ちを受け取ることは、できない。

なにを言われても、私の心が動くことはない。

「……面倒なの。誰かを好きになって、浮かれたり、落ち込んだり、傷ついたり、傷つけたり。そういうのが、全部、嫌なの。なにもなければ、なにも感じなくて済むから」

やめておけばいいのに、私の口からは勝手に冷たい言葉が零れ落ちる。

自分に向けられる優しさを、好意を、全身で拒絶する。

いままで誰に対しても、そうしてきたように。

これ以上誰にも心をかき乱されないように。
< 62 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop