恋愛零度。
そのとき、ふいに、指先に、なにかが触れた。
ビクンと私の指が反応する。
桐生くんのほっそりとした両手が、私の手をそっと包み込む。
まっすぐに私を見つめて、
「君は、なにをそんなに怯えてるの?」
と落ち着いた声でゆっくり問いかける。
「なにが君を、そんなに怯えさせるの?」
「怯えてる?私が……?」
「俺にはそう見える。でもそれを知られたくなくて、入り込まれたくなくて、拒絶してしまう。ちがう?」
「……なに、それ」
私はつぶやいた。
胸の痛みとともに、小さな反抗心が顔をだす。
「何も知らないのに、適当なこと言わないで」
苛立つのは、必死に隠していた心の奥底を、見透かされた気がしたから。
自分のいちばん弱くてみっともない部分を、桐生くんみたいな人に、見られたくないから。
「そんなんじゃない。本当に、ただ、ただ……」
その先が、言葉に詰まって言えなくなってしまった。
だってーー全部、その通りだったから。