恋愛零度。

「散歩、俺も一緒に行っていい?」

「噛まれてもよければ」

私は少し笑って答える。

私も最初に会ったときは大変だったなあ、と思いだしながら。

「え……痛いのはちょっと嫌かも」

「じゃあだめだ」

そう言うと、桐生くんは残念そうな顔をした。

自分の好きなものや存在のことを話すのが、こんなに楽しいことだというのも、いままで知らなかった。

それはクラスの女子たちがいつもしている恋の話に、少し似ているのかもしれない。

好きだから、聞いて聞いてって、つい自慢したくなってしまう。

ちょっと喋りすぎちゃったかな、と思ったけれど、桐生くんが楽しそうににこにこしながら聞いてくれたから、私は嬉しいような、少しくすぐったいような気持ちになるんだ。


< 72 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop