恋愛零度。
「ついたよ」
学校の近くのイチョウ並木の前で、桐生くんが足を止めた。
「えっ、ここ?」
……って、ここ、毎日通る通学路だけど?
だけど桐生くんは、ニッと口角をあげて、
「そう、ここがいいところ」
と答えた。
両脇を、黄色に彩られたイチョウの木がずらりと囲んでいる。
そのとき、はっと思い出した。
最初に桐生くんを見たのは、ここだった。
学校の帰り道、この場所で、君は、泣いていた。
ほんの一瞬だったけど、いまの君の表情を見て、やっぱり気のせいじゃなかったんだと思った。
「桐生、くん……?」
君のその目に、うっすらと涙が溜まっていたから。
「ど、どうしたの?」
「ごめん、ちょっと……悲しいこと、思い出して……」
その言い方から、本当なんだとわかった。
全然、気づかなかった。
いままで、少しもそんな素振りを見せなかったから……。