恋愛零度。

この前も、君はこの場所で泣いていた。

そして、今日も。

なにがあったのか、聞いてもいいんだろうか。

それとも、桐生くんが話したくなるまで、触れないほうがいいのかな。

桐生くんなら、こういうとき、どうするかな。

「あの、桐生くん……」

そう呼んでみたけれど、その先の言葉が続かなくて迷っていると、

「ごめん。また、情けないとこ見られちゃったな」

と桐生くんが苦笑した。

「今日は大丈夫だと思ったんだけどなー」

無理に軽くしようとする言い方が、胸を締めつけた。

そんなことしなくていいのに。

悲しいときに、わざと明るく振る舞うなんて、しなくていいのに。

「……情けなくなんて、ない。泣きたいときは、泣けばいいよ」

私は言った。

事情はわからない。無理に訊かないほうがいいのかもと思う。誰にでも、触れられたくないことはあるから。

だけど、私がここにいるから。ひとりじゃないから。

そう言いたかった。



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