恋愛零度。

「俺はこの学校に入ってよかったと思ってるよ」

桐生くんが言って、私を見る。

「だって、そのおかげで真白に会えたから」

「…………っ!」

また、そういうことを平気な顔で言う。

まるで挨拶みたいに、あまりにもさらりとそんな恥ずかしい台詞を言うから、いちいち動揺している自分が馬鹿みたいだ。

「あ、真白が照れてる」

「照れてない!」

……変だ。こんなの私じゃない。

言葉ひとつで動揺したり、恥ずかしくなったり、声を荒げたり。

桐生くんと出会ってから、感情を隠すのが下手になった。

いままでは、隠すどころか、その必要がないくらいに平坦だったのに。


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