恋愛零度。

桐生くんは、まだ来ていなかった。

なりゆきで、毎日中庭のベンチで一緒にお弁当を食べているわけだけど、だからといってわざわざ待つことはしないで、私は勝手に食べはじめる。

私はため息をついて、シュウマイをひとつ端で摘んだ。

ーーと、そのとき。

「うおっ、シュウマイ弁当。斬新だなー」

背後から、突然、聞きなれない声がした。

私は振り向いて、唖然とする。

…………誰?

「俺、弁当忘れちゃってさ。超ハラ減ってんだよね。いっこくれない?それ」

「は?」

私が答えるより先に、手が伸びてきて、

「いただきまーす」

いただきますと言いながら、もう食べている。

な……、なにこの人。

恐怖を覚えて、私は思わず座ったまま後ずさりをする。
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