恋愛零度。
明るい髪の毛先は赤色で、耳にはピアス。見た目も言動も、チャラい雰囲気。
改めて見てみて、気づいた。その人を、どこかで見たことがあった。
こんなに目立つ人、一度見たらなかなか忘れなさそうだけど。
どこだっけ…………?
「あ……っ!」
自販機の前で、桐生くんと会ったとき。顔はよく見えなかったけど、たしか、近くにこんな感じの人がいた気がする。
「やっと気づいた?」
と、彼はニッと笑みを浮かべた。
「ちょいちょい顔合わせてるはずだけどなあ。君、ほんと他人に興味ないんだねー」
「…………」
余計なお世話だ。
「あ、オレ、蒼の友達の鷲尾由良ってゆうの。由良くんって呼んでねー♪」
「はあ……」
「真白ちゃん、そんなに警戒しないでよー。さすがに親友の好きな子に手出そうとか思ってないし、あ、さっきのかわいいは挨拶みたいなもんだし……」
ーーと、そのとき、
ゴスッ!!!
いきなり、ものすごい音がした。
「いてぇ!」
涙目で頭を押さえるチャラ男、いや、由良くん。
「なに失礼極まりないことを言ってるんだ、このクズ」
いつの間にかそこにいた桐生くんが、心底蔑んだような冷たい目で見下ろしている。
「親友をクズ呼ばわりとはひどいなー」
「いまのはどう考えてもクズ発言だろ」
「うん、ごめん、あと本の角で殴るの地味に痛いからやめて」