恋愛零度。



静かだった私のお気に入りの場所が、なんだか急に、人口密度が増えた。

もはや、穴場でもなんでもない。

「すげー。千夏ちゃん、弁当自分で作ってるんだ?」

由良くんが三好さんのお弁当を覗き込んで目を輝かせる。

三好さんのお弁当は、ハート型のウインナーやプチトマトなどで可愛らしく盛り付けられている。

私は三好さんの意外な女子力の高さに内心驚いていた。

ダイエット中だという渡辺さんは、こぢんまりとした入れ物にサラダだけ。

なんか2人ともちゃんと「女子」してて、感心してしまう。

それに比べて私は、こんなときに限ってシュウマイオンリー……お母さんを恨みたくなった。

「うち、両親共働きだから。朝練もあるから大変だし」

三好さんが照れたように笑って言う。

「え、朝練あるのに作ってんの?何時起き?」

「5時起きだよ」

「まじ?すげえ、尊敬する」

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