君との恋はあたたかいものだった。
 今日、舞斗にもう1度きちんと告白しよう。返事は期待しない。どうせされないって分かってるから。もうすぐか……。また放課後。この前帰ったときはもう少しあったかかったな。廊下の窓から太陽をボーッとみながらそんなことを考えていた。

「愛奈!ごめん。遅くなって。話って何?」
「舞斗。私、舞斗のこと好きだったよ。」
「急に何?っていうか、だった?今も僕のこと好きでしょ?」

「お前さ、自惚れんのも大概にしろよ。」
 急に出てきたから驚いた。だって今日は奈緒と先に帰っててって言っといたのに。
「愛奈。どういうこと?」
 私が聞きたいよ!翔にはこの話してないもん。その瞬間、翔はニヤッと笑った。
「愛奈はもう俺のだから。」
 そう言って翔は私を抱き寄せた。まるで、舞斗にみせつけるように。
「え?愛奈、そうなの?僕のこと騙してたの?」
 騙してた?私が?いい加減にしてよ!そっちじゃない。騙してきたのは。言い返したいのに言い返せない。声を出したら、泣いてしまいそうだから。

「舞斗。男として恥ずかしくないわけ?騙してたのはそっちだろ?彼女がいるのに他の女に手ぇ出したりして。お前のことでどんだけ愛奈が悩んだと思ってんだよ?どんだけ泣いたと思ってんだ!」
 ーーダンッ。
 翔が壁を蹴った音。翔は優しいから人や物にあたったりしない。なのに、翔は壁を蹴った。よほど怒っている。でも、私はそれが嬉しかった。私のために怒ってくれていると思ったから。

「心から好きなら、愛してるなら泣かせるなよ。お前がしてたことはただの自己満だ。2人に好きって言われて、『俺はモテてるんだ』って思い込みたかっただけだ。『2人相手にしてる俺ってかっこいい』って自分に酔ってただけだ。」
 翔……。もういいよ。
「どっちが好きか分からないなら、それは恋じゃない。女ひとり守れねぇなら付き合うな。お前にはその資格さえねぇよ。」
 もう充分だよ。その意味を込めて、クイクイッと袖を引っ張った。

「じゃあな。ほら、行くぞ。」
「あ、うん。」
 ずっと翔が肩を抱いてくれていた。それだけなのに、すごく安心してドキドキした。
「あーぁ。ごめんな。勝手に出しゃばったりして。もうこれじゃ舞斗と話せないよな。ホントごめん。」
 叱られた犬みたいにシュンとした翔をみてクスクス笑った。
「いいよ。別に。言ってくれてありがと。スッキリした。」
「愛奈は言ってないだろ?なのに、スッキリしたのか?」
「うん!気持ちよかった。胸がスッとした感じ。」
「そっか……。なら良かった。じゃあ帰るか。」

 翔と一緒に門をでると、角に奈緒が立っていた。
「翔が忘れ物したって言ったから待ってたの。」
 フフッ。バレてるよ。目が真っ赤。あえて突っ込まないけど。
「そうなんだ。たまたま会ったから一緒に出てきたの!」
「そうそう。」
 言いながら奈緒に向かってピースしてる。奈緒も笑ってるし。また支えられちゃったな。

「愛奈ー!翔ー!早く帰るよ!」
「じゃああそこの信号まで誰が1番速いか競争!1番遅かったヤツは、人数分肉まん奢れ!」
「え?ちょっと待って……。」
「どん!」
「愛奈はやく!」
 なんでよ?この中だったら私が1番遅いじゃんか。
「俺1番!」
「私は2番!」
 ほらね。結果は私がビリ。
「愛奈が最後か。じゃあ俺が奢ってやるよ。」
「なんでよ?」
「奈緒、よく考えろ。俺は愛奈が好きだからだ。」

 ーードキッ。
「またでた。」
「本心はちゃんと口にしないとな!」
「はいはい、言ってれば?」
 そう言えば、告白の返事してなかったな……。しないと悪いし……。翔の受験は1月の終わり。私の受験は2月のはじめ。落ち着いてからしようと考えたけど……。ちょうどバレンタインの時期とかぶっちゃうなぁ。でも仕方ないよね。

「2人とも!ホントにいつもありがとう!」
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