君との恋はあたたかいものだった。
「ごめん。もっかい言って?」
 え?嘘だよね?
「えっと、あのね、舞斗くん後輩と3ヶ月前から付き合ってるんだって。大川萌香って子。言わない方がいいのかな?って思ったんだけど、やっぱり知っといた方がいいかなって。」
 私の顔色をうかがう様に、そう教えてくれたのは、幼なじみの相澤奈緒。奈緒には、相談にのってもらっていたから、私と舞斗の関係を知っている。今は放課後だから、誰もいないけど……。

「あっ!」
 ハッとして、私の方を向く。
「どうしたの?」
「えーっと、あの……。その。なんていうか……。」
「だから、何?ハッキリ言って。」
 言いにくそうに口をモゴモゴと動かした後、
「……………………ら………ぃ?」

 聞こえない!なんて?
「怒らないから。ちゃんと言ってくれないと分かんないよ?」
「…………たから………い?」
「だから!聞こえないって!」

「その子と付き合ってたからなんじゃない!?」
 ……ん?何が?
「ホントに分かんないの?」
 よっぽど不思議にしていたんだろう。あきれた顔を浮かべて、

「その子と3ヶ月前から付き合ってたから、愛奈と付き合わなかったんじゃないの?その子と付き合ってるから、誰にも言うなって言ったんじゃないの?」
 「どこまで鈍感なんだ」って言った。でも、私はそれどころじゃなくて。今は10月。私たちが想いを伝えあったのは、1ヶ月前の9月。3ヶ月前ってことは、7月。夏休み前から……?
 嘘だ。だって好きって言ってくれたもん。

「もー、奈緒。冗談キツいって。」
「ホントだよ。後輩に聞いたの。」
「そんなわけ……。」
「ないって言い切れる?言い切れないじゃん。信じたくないのは分かるけど、事実なんだよ。」
「だから、わかんないじゃん!もういいよ。奈緒はそうやって思ってれば!?」

 気づかなかった。自分のことで精一杯で。奈緒が泣きそうになってるなんて。気づいた時には遅かったんだ。
「あ、ごめ……。」
「もういいよ!愛奈に伝えなきゃって思って。愛奈が騙されたままなのは嫌だから!あとで知って泣くぐらいならって。なのに……。もう知らないから!」

 勢いよく教室を出ていく。……やっちゃった。いつも私は自分のことしか考えてない。奈緒はあんなに私のこと考えてくれたのに。

 ポタポタと机に涙がおちる。こんなつもりじゃなかったのにな。全部。奈緒にあたっちゃったことも、騙されていたのに気付けなかった自分も……。いや、気付かないようにしていた自分が嫌になる。どれだけ時間がたったんだろう。不意に頭の上から声がした。

「お前さ、こんなとこで1人、何やってんの?」
顔を上げると、もうひとりの幼なじみ、平川翔。翔には、何も話してない。だって、話すほどのことでもないでしょ?
「さっき、奈緒とすれ違ったけど泣いて………。愛奈もか?どうした?しょうがないから、俺がきいてやるよ。」

 いや、聞いてほしいなんて一言も言ってないし。てか、もう座ってるし!なんなの、ホント。でも、私は知ってる。これが、翔なりの優しさなんでしょ?いっつもそうだった。嫌なことがあって、奈緒にも言えないとき、絶対隣には翔がいた。「俺がきいてやるよ」って。

「俺がせっかくきいてやるっつってんのに。早く言えよ。」
「………知ったら私のこと嫌になるかもよ?」
「俺嫌になったりなんかしねぇから。なるわけないだろ?何年一緒にいると思ってんだ?」
 カッコつけちゃって。
 あー。もう!ホントに知らないから!
「あのね、実は……。」
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