オトナの事情。




「いやいや、2人は本当に良く頑張っているし、監督という立場から言わせて貰えば、正直思っていた以上の熱意を持って取り組んでくれているんです。
でもね、前評判というのは、お2人の実力とは関係なく出るものだ。

最近の、月9という枠自体の視聴率低下に加えて、今回はジャニーズさんからはキャスティングをしないという話ですし…」



監督はそこでチラッと、うちの社長を伺った。
…なるほど、うちの事務所が圧力をかけてるわけだ。





はあ、と思わずため息が漏れる。




「…ゴシップですか?」





わざわざ俺たちを招いてそんな話をするなんて、ソレだろう。




物分りが良くて助かる、とでも言いたげに、狭間の事務所の社長が封筒から写真を取り出した。




「実は、両社にこれが届いていてね。」




その写真は、先日のドラマクルーでの飲み会の後、俺と狭間ルナがタクシーに乗り込むところをとらえたものだった。

くそ、撮られていたのか。

運悪くも、2人きりの写真だ。




「握りつぶすのは簡単だが…使うのもアリだ、って話になってるんだよ。」


うちの社長も口を開き、もう上での意見は固まっているのが伺えた。


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