オトナの事情。
「また皆に迷惑かけることになって、ごめん。」
翌日、最後のドラマ撮影を終えてBLUEの楽屋に合流した俺は、メンバーに頭を下げた。
昨日のデート報道で打撃を受けるのは、俺だけじゃない。
「…ええよ。べつにかまへんって。それより手に持ってんのお土産とちゃうん?はよ出し!」
なのに皆は、笑って許してくれるんだ。
「お説教は社長にされたでしょ?それでもルナちゃんと別れるつもりないんだったら、俺らはもう言うことないって。」
「そうですよ。皆、色々抱えながら夢を追いかけてるんだから。お互い様。」
「俺らだって、ルナちゃんには、恩があるしね。ユキをこんなに表情豊かにしてくれてさ~」
ああ、俺はメンバーにも頭が上がらないな。
「…それ、ルナのチョイスだから、美味しいか分かんないけど。缶は悠二にやれってさ。」
今朝早起きして底にルナのサインと、ユウジ君大好きです、応援してます!なんて書いていた。本当に抜かりない。
…俺には絶対に、好きだなんて言わないんだろうな。
でも、それでも良いじゃないか。
言葉にしてくれなくたって、確かにルナは、俺を必要としてくれている。
たとえあと1年で終わってしまうとしても、俺たちは今、確かに幸せを感じられる。
もう、それだけで、十分なんだ。
だから、ルナの笑顔を曇らせるようなこと言って、困らせたりはしない。
分かってるよ、と腕を開いて、ルナとルナを取り巻く全てを、俺が包み込んでやろう。