オトナの事情。
曲は結局、俺の書いた方をシングルとして出すことになった。悠二の書いたのは、カップリングに。
もしウェディングソングをPVを作るシングルとして出してしまったら、自分の彼女にしてあげられない結婚式を、一足先に他の誰かとやることになるだろう、という、メンバーの完全な私情だ。
そしてそのお披露目が今日のMステ。
「今回のテーマは、禁断の恋、というか、報われない恋、みたいな感じで…」
「君達、悲しい恋の歌好きだよね。」
「ははっ、そうですね。割と多いです。」
答えながらもふと視線を移せば、黒い服にスタッフのカードを首から下げたルナがこちらに気付いて小さく手を振る。
これを誰よりも早く聴かせてあげたくて、わざわざスタジオまで呼びつけたんだ。