オトナの事情。





「それではBLUEで、初披露の新曲、“オトナの事情”。」




アナウンサーがそう言えば、ピアノの悲しいイントロが流れる。



ルナがすぐそこで聞いているのは知っていたけど、とても顔を見れなかった。見てしまったら胸が詰まって、声が出なくなってしまうと分かっていたから。











ほらそうやって 笑うたび

あいつのことを 思い出すの?

それとも 他の誰かだろうか

どれだけ考えたって

それが俺だと 思えないのは

情けないよね

こんなにも 好きなのに




ねえ本当は もう俺のこと

とっくに好きに

なってるんじゃないの?

だってそんなに 無邪気な笑顔で

俺の手を取るのに





ああ君は 天使か 悪魔か

神様は 味方か 敵か

分からないけど

分かるのは そう

もうどうしようもなく 君が好き





誰よりも ずっと愛してる

君を幸せに してあげられる

でもそんなこと 伝えたら

困った顔で笑うでしょ?

だから絶対に 言わないよ

オトナの事情は 複雑さ

叶わぬ恋が 俺の愛

受け取ってとは 言わないよ

せめて 君は いつも通りに

気付かない フリをして




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