オトナの事情。
「…悠二の言う通りかもしれない。」
俺はルナを真っ直ぐに見て言った。
「もしルナさえ良ければ…俺は、やりたいよ。ルナとの、ウェディングの撮影。
だって…やっぱりウェディングドレスを着たルナの横に立つのは、俺であってほしいから。」
…たとえルナが、他の男のものになってしまうとしても。
そう言いながら見つめていたルナの瞳には、みるみるうちに涙が溢れて。
『ユキ君…意味、分かってるの?』
ああ、分かってるさ。
嫌ってくらいに分かってる。
こんなに愛しい君は、もうすぐ他の男の所へ行くんだろう?
こんなに愛しあっているのに、あの広い家に俺1人を残して、消えてしまうんだろう?
俺たちは、絶対に幸せになれないんだろう?
「…ちゃんと、分かってるよ。」
そう言って、その涙を指ですくった。
後日、正式に事務所を通して、スーパーモデル狭間ルナの最後の雑誌の表紙を、2人のウェディング写真が飾ることに決まった。