オトナの事情。





「…初っ端から海ね。」




目の前では、波が引いては返す浜辺で、ルナが水着の撮影中。




なんでも、ハワイは今、雨季なんだとか。
タイトなスケジュールの中、サンセットだけを当てにするのは危険だということで、朝日の中すでに撮影を始めている。




「向坂くーん、入って~!」

「はい!」





高田さんに呼ばれ、俺も駆け寄る。




「もうね、2人で好きに遊んでくれれば良いから。」


『やったー!』




ナチュラルな感じで、なんて言われてルナは大はしゃぎしてるが、こんなにカメラだらけの中、ナチュラルもクソも無いだろ、と思ってしまうのは俺だけだろうか。


本業が歌手の俺は、やっぱりこういうのは慣れなくて、ドギマギしながら入水する。


途端、後ろから思いっきり水をかけられた。





『ユキ君のバカー!』




振り返れば、満面の笑みで俺を罵倒するルナ。





…めっちゃナチュラルだな~。





ルナがあまりにも自然体で、いつも通りすぎて、なんだか緊張していたのが笑えてくる。




「やられたらやり返す!」



『ひゃっ!…わーもうビショビショ~!もう~!』



「ちょ、おい、押すなって!」


『やられたらやり返す~』


「いや、パクんなよ!」



『きゃぁっ!』




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