オトナの事情。
『…ふふっ。』
ルナが優しく微笑めば、スタッフからは自然と拍手が湧いて。
「向坂君メイク直してる間に、るーなのカット行くよ~」
「「「はーい」」」
高田さんの声で、また現場が動き出す。
「どうでした?」
ニヤニヤしながらメイク直し中の俺を撮るカメラマンさんは、多分既婚者で、最初から俺が泣くと分かってたな、と思った。
「…まさか本当に泣くとは、って感じっすよ。」
恥ずかしいから撮らないで、と手でカメラを隠してみせたけど、きっとこれはいいように編集されるぞ。
男泣き、とかなんとかってね。
「向坂くーん、準備できたらスタンバイ~」
「はーい、向坂さんメイクおっけーです!」
ありがとうございます、とメイクさんに挨拶して、チャペルの祭壇へ向かう。