オトナの事情。
…連れ去るなら、今だ。
このままこの手を引っ張って、どこまでも走って行って、誰にも見つからないところで、二人だけで暮らせばいい。
苦しみも、幸せも、全部2人だけで分かち合えばいい。
何もかも捨てて、俺について来いよ。
そう、一言、言えば良い。
…言うなら、今が、最後なんだ。
でも。
『…もしもし。はい、ありがとう。今、行きます。』
車、着いたって。
そう笑うルナが、俺の手を取るほど愚かじゃないのは、俺が一番分かっているから。
「…ん。」
やっぱり、黙って抱きしめることしかできないんだ。