オトナの事情。
『…ありがとう。』
ルナはそう言って、キスをした。
触れた唇を離して、不敵に笑って。
くるっと後ろを振り返って、ランウェイさながらのキャットウォークで外へ向かうその背中を、ずっと、見ていた。
ドアが開くと、一気にフラッシュがたかれる音がして。
その光の中に、スッと吸い込まれるように、ルナは消えて行った。
ドンっというドアの閉まる音が広いエレベーターホールに響いた時、
キスをする時にルナが俺の首に腕を回すのが好きだったな
なんて思った。