オトナの事情。
[向坂さんは、以前、ウェディングの撮影をされたことがあると思いますが、その時はどう感じられましたか?]
遂に、俺だけをターゲットにした質問が来る。
もう、逃げたって仕方ない。
自分に言い聞かせて、マイクを口元に寄せた。
その途端、フラッシュは今日一番の音を鳴らす。
「…そうですね、撮影の時は、気分を本当の結婚式みたいに持っていくために、今回ゼクシィのCMに起用していただいた僕たちBLUEのウェディングソングとかを流していて。実際に式を迎えるのとは全然違うんでしょうけど、なんていうか、なんとも幸せな雰囲気の現場でしたね。」
「俺も、ドラマで結婚式のシーンを撮ったことがあって…」
滅多に自分から話さないコンちゃんまで、俺だけが答える状況は作るまいとしてくれているのが分かる。
「それでは質問は終わります、BLUEの皆さんは控え室に…」
「向坂さん!狭間さんの婚約報道について一言!」
「向坂さんはご存知だったんですか?」
「交際報道を否定されなかったのは何故ですか?」
何も言わず、表情も変えず、あと数歩歩けば、記者の質問に答えなくてもやり過ごせた。
でも。
「狭間さんに裏切られたと知ったのはいつですか?!」
その質問が耳に入った途端、俺は、思わず振り返ってしまう。