オトナの事情。
途端、一気にシャッター音が加速して、私の背後に近付いてきたのが誰なのか想像するのは容易だった。
『…本当はね、分かってた。2人を殺したの、お義父様だって。』
振り返れば、私よりも辛そうな顔をする彼。
『でもね、私、あの人のこと、信じたかった。真実を知って、あの人がいなくなってしまうのが…嫌だった。』
確かにあの人は、両親を殺して、私の自由を奪ったけど。
それでも、なんだかんだと私を大切に育ててくれたあの人が、悪い人だなんて、思いたくなかった。
自分を愛おしそうに見つめるあの人に、憎しみを抱きたくなかった。
『バカみたいでしょ、私。』
あの人が私を愛おしそうに見つめるのは、私の向こうに、お母さんを探してたから。
殺してしまうほどにお母さんを愛していたこと、気付きたくなかった。
その愛は、私に向けられたものだと、思いたかった。
『…誰かに必要とされていたかったの。たとえそれが、実の両親を殺した人でも。』