オトナの事情。
「なんやってー?!甘ユキでエロユキでバカユキ?!」
『そうなの!健ちゃん怒って!隼人さんも!』
「まあまあ、ユキはね、るーなちゃんのことかわいくて仕方ないんだって。」
許してやって、なんてなだめるふりして、明日から楽屋で散々俺をいじってくるつもりだろう隼人さんは、顔がニヤニヤしている。
「せや~、デレデレしたいねん、デレユキやんな!」
『あはは、デレユキ~!』
「デレユキじゃねーよ!健ちゃんも何言ってんの!」
きゃー怒った、こわーい!とかなんとか言いながらキッチンに駆け戻るルナを、メンバーはかわいいかわいいと言いながら靴を脱ぐけど…俺がおっさんなら、あいつももう、25だからな。いつまで少女でいるつもりなんだか…。
離れていた4年間の話を、ルナはしない。
でもあの再会の日、結婚式を目前に控えたルナは、まるで別人のようにオトナになっていた。
それが、全ての答えなのかもしれない。
きっと、その4年間で自分を押し殺すことに慣れてしまったんだろうな。
ところが今じゃ、21の頃に戻ったように、毎日このはしゃぎっぷりだ。
その底抜けに楽しそうな笑顔を取り戻せたのが、俺の手柄なんだとしたら…まあ、バカ騒ぎも悪くないか。
『ちょっとユキ君?いつまでそこにいるのー!早くしないと乾杯しちゃうからね!はい、10、9、8…』
「あー!ごめんごめん、ちょっと待ってってば」
だったらもう、一生オトナになんてならなくていい。
いくつになっても、少女のように、元気にはしゃぎ回るルナでいてよ。
…俺はいくらでも、隣で振り回されてあげるから。
end.
『「「「 かんぱーい!」」」』
「いや、だから待ってってば!」