オトナの事情。
風呂から上がると、キッチンから良い匂いがした。
「ドライヤー借りたよ。」
『はいはーい、そこ、座ってー』
来たばかりの人間に、そこ、って。
多分ダイニングのことだろう、とやたらとオシャレなテーブルに着く。
間も無く彼女は、2人分の朝ご飯を運んで来てくれた。
『はい、ご飯と味噌汁ね。朝は和食派だったよね?』
「え?」
『前ラジオで言ってた。』
…ああ、と納得する間も無く、またキッチンへ行ってしまう。
『私スムージー作ったけどユキ君も飲むー?』
「あ、じゃあ、頂きます。」
『んー、持ってくー』
…あれ、これ、待ってないで俺も動いた方が良いんじゃないか?
「いややっぱり自分で取りに行『良いから座ってて』」
良いから、と言われてしまって、一度浮かせた腰を素直に戻す。
『…はい。ユキ君は今日は1日だけお客さんで良いから。でもその気配りはイケメンだと評価してあげよう!』
焼魚とスムージーをお盆に乗せて持って来た彼女は、明日からはしっかり動いてもらうよ、なんて言う。