オトナの事情。



ああ、どうして今夜はこんな風にあいつを思い出すんだろう。





…あー、そうだ、昼間の記者会見。


アレのせいだな。







あの後の社長、怖かったー…


まあ、事務所に口止めされてたのにマスコミにペラペラ喋りすぎたからな。



くそ、お前、そんな所までお見通しかよ。本当にかわいくない女。






ヒロユキ、お前、らしくないぞ。





なんて、社長には言われた。

メンバーも俺の様子がおかしいと相当心配していたし、今日の記者会見が明日の朝の芸能ニュースの目玉になれば、沢山のファンが饒舌な俺の姿に驚くんだろう。

ああ、そういえば明日の朝の情報番組の司会は、事務所の先輩だったじゃないか。俺の件についての報道が出れば、何かコメントを求められるかもしれない。

申し訳ないことしたな。今日中にメールを入れて謝っておこうか。











…らしくない、なんてね。



社長にはすみませんと謝ったけど、俺は多分、本来こういう人間なんだ。




それを知っていたのも、あいつだけ。



それは、ついこの間まで、俺自身だって知らなかった自分。




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