オトナの事情。
今日は朝から一緒に撮影だからルナのマネージャーの車に乗せて行ってもらうことになっているが、約束の時間までまだある。
かといってルナも自分の読み物に夢中になっているので、とりあえず俺も、さっき積み上げた雑誌の中から何か見てみることにした。
こいつ、普段何読んでるんだ?
…VOGUEに、ELLEに…
この付箋だらけの分厚いのは…最新のプレタポルテ秋冬コレクションの総集編?
ハリウッドセレブのゴシップ誌もある。
…うわ、こんなところにうちの事務所の月刊誌挟んでおくなよ。ビックリした。てか積み上げたの俺か。
…あ。
その下にあった、ルナが表紙の女性誌が目に留まる。
“るーなのお気に入り私物、大公開!”
その見出しに、ページをパラパラとめくる。
『あー!ユキ君発売前のやつ見てるー!』
ルナは自分のほうの雑誌を見終わったのか、俺の手元を覗き込んできた。
「へー、発売前なの?これ?」
『そそ。明日とかかな?多分。』
自分の特集を見て、この取材嫌だった~なんて苦い顔をする。
「…てかお前、ルームウエアはジェラピケのふわもこ、って完全に嘘だろ。」
『良いの。芸能人は夢を売るお仕事ですから。』
まあ確かに、ヒラヒラのワンピースよりも楽に着れるメンズの服が好きです、なんてルナに言われたら、ファンはショックを受けるんだろうけど。
「別に、テレビでも好きな服着れば良いのに。」
少しだけ、昨日のお返しをしてやった。