オトナの事情。



まあもっとも、その後楽屋では、謎すぎる学歴について議論になったのだが。




『んふふ。誰かが作ってくれたもの食べれるのって、幸せだよね。』



突然笑い出したかと思えば、そんなことを言う。


「ずっと一人暮らしだったんだっけ?」


『んー。まあね~。』





…ああ、またそうやって濁す。


でも、俺たちは付き合ってるわけでもなんでもないんだ。


俺には、問いただす権利なんてない。




『あー、でもやっぱり、一緒に暮らすのがユキ君で良かったぁ。』




顔をくしゃっとさせて、そんなことを言うもんだから。



「…なんでよ、いきなり。」



速まる鼓動がバレないように、努めて冷静に聞き返せば、




『だってユウジだったら、お料理できないでしょ。』




ほらそうやって、簡単に他の男の名前を出す。


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