オトナの事情。





『ねえユキくーん?』



「んー?」





リビングの方から呼ばれてそっちを覗き込むと、





『私に何か、言うことがあるんじゃない?』




満面の笑みで10円玉を掲げるルナの姿があった。





…あ。




急いでリビングに向かえば、もうそれはそれは満足そうにソファに座っていた。




『で?これはどうしたの?』


なんて楽しそうに笑うかな。



「…参りましたよ。楽屋はルナの言う通りの反応でした。」



素直に謝りながら、反対側に座る。



『ほら見ろ!ファン舐めるなよ~!

…で、こちらのポテチは?』



ルナは、10円玉と一緒に置いてあった袋を手に取る。



「いや、なんか、ね。60円だけってのも微妙かと思って、一応お菓子でも、と思いまして…」




本当はポッキーでも買おうかと思ったものの、たまたま目撃された健ちゃんに


「自分がCMやってるお菓子買って帰る男って、どうなん~?」


なんて茶化され、買えなくなってしまったんだ。

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