オトナの事情。




『さりげなく番宣もしなきゃでしょ?もうすっごくハードワークだよね。それにさ…』



表情をくるくる変えながら明るく話すルナは、まるで全身で幸せを身にまとっているようで、今、俺たちが困難の中にいることを、すっかり忘れさせてくれる。


一生懸命に話しかけてくれているけれど、内容なんて、全然頭に入って来ないよ。




どうしようもなく触れたくて、おもむろに手をとって握れば、ルナは どうしたの?なんて笑った。




それがまた最高にかわいくて、今度はその手を引き寄せた。





『きゃっ、ちょっと…ユキ君?!』


「んー?」


『お客さん見てるよ?!』



「…んー。」







どうしたら、俺のこと、好きになってくれる?




そんなこと言えない代わりに、黙ってルナを、ギュッと抱きしめた。









次の朝、ニュースでは、「撮影中は交際を否定していたものの、休憩になると人目もはばからずイチャイチャしていた」とアナウンサーが喋っていた。


きっとスタジオで見ていただろうBLUEのメンバーは、俺たちのことを、茶化さなくなった。

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