オトナの事情。
『…ずるいよね。そういうとこ。』
「ああ…よく言われるよ。」
どちらからともなくキスをして、
「カーット!」
今日の撮影はおしまい。
「いやー、ヒロユキ君、ルナちゃん、良かったよー!やっぱり2人のキスシーンは華があるね!!!」
「そんな、ありがとうございます。」
『うふふっ。ありがとうございます!でもやっぱり、未だに慣れませんよ。』
俺の隣で朗らかに笑う彼女は、今1番人気のモデル、狭間 ルナ。
顔良し、スタイル良し、性格良し。
今20歳だったか。
そんなに色々恵まれてちゃ、ここまで色んな人に妬まれ疎まれ、苦労して来たんだろうな。
大してよくも知らない彼女に少し同情の念を抱きながら、お疲れ様でした、と挨拶をする。
「あ、ヒロユキ君これであがりだっけ?ルナちゃんもう1カットあるからさ、ちょっと待っててくれないか?2人に話があってね。この後なんかスケジュール入ってる?」
「いや、今日はもう帰るだけなんで、大丈夫ですよ。」
なんだ、早く帰れると思ってたのに。まあこれといってやることもないし。
監督にそう言われれば仕方がないか、とスタジオの空き椅子に腰掛けた。