彼と私のかくれんぼ
「じゃ、白石。行くぞ」
「え? 行くってどこに?」
「決まってんだろ。ミッションクリアの為に文化祭、回んなきゃだろ」
「あ、そうだった」
「相変わらずボケッとしてんなあ、白石」
アハハハ、と大きな口を開けて庄司くんが笑う。
「どうせ私はぼんやりさんですよ」
「拗ねんなって。クレープおごってやるからさ」
その言葉に私は目を丸くする。
「何驚いてんだよ。言ってたじゃん、白石。『文化祭でクレープ食べたい』って」
数日前の、菜穂子ちゃんとの会話を思い出す。
確か私は文化祭のプログラムを見ていて、そこでクレープをやっているクラスを見つけたんだった。
そして、クレープを食べたいっていう話を菜穂子ちゃんとしたのだった。
「確かに言ってたけど、庄司くん聞いてたの?」
私の質問に、庄司くんはちょっとだけ私から視線を外し、目を泳がせた。
「聞いてたっつーか、聞こえてくるんだよ」
「聞こえてくる?」
「……白石の声が、いっつも俺の心にスーッて入ってくんの」
「……よくわかんない」
すると、庄司くんの手が、私の頭にポン、と乗っかってすぐに離れていった。